今月、教会のオルガンを弾くコンサートがあったのですが、そこには、1835年にAngelo Amati というイタリア人が作ったオルガンがあると聞いて、楽しみにリハーサルに行きました。
そこで発見したショートオクターヴ(短いオクターヴ)。イタリア語ではオッターヴァコルタといいますが、どういうことかというと、音域の一番最後のドからドのオクターヴが見た目はミまでしかないのに、ちゃんとドまで音があるんです。ド、シ、ラ、ソ、ファまでは普通なのですが、その後、ミはソ#を押して、レはファ#、ドはミを押すと出るようになっているんです!分かります?
このような楽器が普通に使われていた何百年も昔は、横幅(音域)の
狭いコンパクトな楽器に、より多くの音があるという、大変便利なもの
だったと思いますが、今日、こうした楽器に触れる機会は少ないので、慣れるのに時間がかかります。
これをもう少しリアルな感覚で説明すると、リハーサル中、曲を弾いていて、ラbだと思って弾いたらミが鳴って、「うそっ・・!?」と思い、ショートオクターヴであることが判明、一緒にリハーサルしていた歌手の二人に一生懸命説明して、
「ラbが無い!!!」とワーワーひとりで焦っていた訳です。
だって、その辺のラbもファ#もミbも存在しないのです!
それで、リハーサルから帰ってきてからは、家のチェンバロをショートオクターヴに調律して、気を取り直してコンサートまでの1週間、ショートオクターヴで過ごしたわけです。
一週間の効果は見事に現れ、逆に今度は同じ曲を普通の鍵盤で弾くのに、ショートオクターヴの癖が取れないくらいです(笑)
また、フローベルガーのトッカータで、私の手では絶対につかめない和音を、ショートオクターヴによって初めて聞くことが出来たのは感動的でした。
この感動を、私の先生に話したのですが、先生の手は大きく、「僕はつかめるけど」
と遠慮がちに言われ、同じ感動を分かち合えなくてちょっぴり残念でした・・・
最後になりましたが、素晴らしいオルガンでした。