2013年9月15日日曜日

我謝監督「311・ここに生きる」

昨日はバルセロナで、我謝京子監督のドキュメンタリー映画「311・ここに生きる」の特別上映会がありました。入場できるのは先着300人で、すでに満員が予想されていたので、上映30分前を目指して行きました。

18時から司会者のあいさつ、バルセロナ日本総領事によるあいさつ、続いて監督のあいさつがあり、上映前に監督からの2つのお願いで、まず1分間の黙祷、そしてこの映画の登場人物をぜひ私たち自身に重ねて観てください、と。最初の5分間は地震や津波の生々しい映像が続くため、そういうものに敏感・苦手な方や小さなお子さんは目を閉じるか一時会場を出てください、というアナウンスの後始まりました。

すごい迫力、被災者の生の言葉が続いて、あっという間の90分。本当にすばらしい作品、見に行ってよかった、これからも監督に頑張って続けていってほしいと思いました。

途中何度も涙が出ました。感情がこうして動かされるのは、監督がおっしゃったように、自分の人生と重ね合わせて、どこかですごく揺すぶられるからだと強く思いました。直接被災していない私たちは、自分の持ちうる想像力を最大限に生かして、思いを馳せないといけないと思いました。


上映後には、監督のお話と質疑応答があり、すごく良かったです。映画館の入り口には、映画に出てきた、被災者たちが作ったタオルの象さん「まけないぞう」と、監督のデビュー作品のDVD販売があり、早速一つずつ購入しました。

監督と。サインをいただいたDVDとまけないぞう。
会場は立ち見が出るほどの満員、100個のまけないぞうも完売。監督は、これからもお住まいのニューヨークから東北に通い続けられるとのことですが、昨日のバルセロナでの上映会のことをも、映画に出ている方たちにお伝えくださるそうです。皆さんは、「もう2年半たったから、きっと忘れられてるのでしょうね」と仰るそうです。

重く身に沁みる被災者の言葉の一つ一つ。それは監督が記者として取材に入ったのではなく、母であり妻である一人の女性として、そういう目線で人々と話し、まずはご自身について9・11の被災体験などを長く語った後に、ぽつりぽつりと少しずつ語られたものの集まりだということも忘れないでいたいと思います。

昨日の夜は、あまりに感情が揺さぶられたので、エネルギーを消耗してぐっと疲れて、もぬけの殻のようにボーっとしていました。思いがいっぱいで、言葉ではうまく言い表せないけど、とにかくよかったです。ぜひぜひ一人でも多くの人に観てもらいたいです。

2013年9月13日金曜日

リハーサル@Girona

コンセルバトーリ正面玄関(右の赤い方)

昨日は一日ジローナで、Tendres Fruitsのリハーサルでした。
リコーダーのアニアが通っていた音楽院のチェンバロをお借りしました。アニアはもうバルセロナに住んでいないので、毎回家まで来てもらうのでは移動が大変なので、時々ジローナで行なっています。

今回新しく組んだイギリスのプログラムは、サンマルティーニ、ヘンデル、コレッリのリコーダーソナタ、作者不詳のグラウンド(パッサカリアのようなテーマと変奏)など、18世紀中ごろにロンドンで出版された作品が中心です。以外にイタリア人など当時ロンドンで活躍していた外国人が多いですね。ソロでは、イギリス人作曲家Tomas Arneのソナタを弾きます。

1時間ほどのプログラムですが、いろいろな音楽的アイデアを二人で煮詰めていくと、どんなに時間があっても足りないくらいです。そういう時間は本当に楽しく、「あー音楽してる!!」って全身で感じます。

Calliope or English Harmony by Henry Roberts, London 1739
こちらはイギリスのメロディー集のようなもので、歌なのですが、下にはフルート用の楽譜があり、それをリコーダーで演奏します。当時有名だったメロディーは、こうしていろんな楽器で楽しまれていたのだろうと想像します。今回のプログラムのタイトル"The Passionate Lover"はこの中から取りました。

バル La Terra
ジローナ産牛肉、フィゲーラス産のトマトと玉ねぎ使用
お昼休みには、アニアが好きでよく通っていたという、自家製アンブルゲーサ(ハンバーガー)を出すバルへ。タイルの素敵な内装と窓の外に広がる川の景色が特徴的でした。居心地が良すぎておしゃべりが弾み、デザートにニンジンのケーキとロイボスティーをゆっくりいただき、とても長いお昼休憩となりました(笑)そのままシエスタ(スペインのお昼寝)ができたら最高でしたが、頑張ってリハーサルに戻りました。

ジローナには何度か来ていますが、演奏会やリハーサルなど、用事をこなすだけのことが多く、今回はちょっとだけですが町の中を歩くことができて、ジローナの顔をすこし覗けた気がします。





Tendres Fruits演奏会予定は、9月21日(土)、28日(土)、10月19日(土)です。詳しくは私のウェブサイトからご覧いただけます。

2013年9月10日火曜日

演奏会@Verdú

演奏会場のサンタ・マリア教会
先週の土曜日は、人口3000人ちょっとのカタルーニャのVerdúという町で演奏してきました。途中、雨に降られながら、バルセロナから約100キロほど内陸に入っていきました。 


開演が夜10時と遅かったので、現地到着が7時ごろ、9時までリハーサルをしてから、唯一開いていたバルで軽く食事をしました。

バルには演奏会のポスターが貼ってありましたが、人通りは全くなくてあまりに閑散としていたので、バルからの帰り道に、お客さん何人来るのかなぁ、誰も来なかったらどうする?なんて話していたくらいです。すかさず「僕がいるよ!」と突っこんでくれた夫にみんなで大笑いでした。

静まり返った教会で身支度をしていたら、だんだん人の声が聞こえてきて、なんと開演時には教会はすっかり埋まっていました!15年続いているオルガンフェスティバルは、やはり地元に根付いているのですね。すごい。

教会の右側の壁に置かれたオルガン
中古で購入したというドイツ製のオルガン。なかなか立派な音がしました。すごく久しぶりにペダルを使ったので、3つのソロの曲をさらった後は、ペダルの練習(というか手と足の動きを連動させること)に集中しました。たとえ全部で5音くらいしか出てこなくても、日ごろやりつけていないものを人前でするのはとても不安ですが、ハラハラドキドキ、うまくいきました!

オルガンの近くにあったきれいなタイル
今回のプログラムは、カタルーニャの作品を取り入れてほしいというフェスティヴァルからの希望で、私はCabanillesとAnselm Violaの作品を演奏しました。後者は恥ずかしながら聞いたことすらなかった作曲家ですが、スカルラッティをさらに簡素にしたようなギャラント様式のシンプルで楽しいソナタに出会うことができました。20世紀初頭のカタルーニャの声楽作品も取り上げ、なかなか面白いプログラムでした。来月はさらに遠い、ピレネー山脈の麓の教会で同じプログラムを演奏します。


バルのテーブルにあった、地元の夏祭りの冊子をペラペラしてたら載ってました!夜遅くに出かけて温かい拍手を送ってくれた聴衆のみなさんに感謝です。