ミラノは2月になってまた一度雪が降りましたが、すぐに雨になり、今日も雨模様です。冬一番の寒さは通り越し、ダウンジャケットで歩くと暑くなったので、普通の冬用コートに替えました。
さて、先日、スカラ座で行われたマウリッツィオ・ポッリーニのリサイタルに行ってきました。本当に行きたかったのは、ヤナーチェクのオペラだったのですが、それを調べていたらたまたま目に留まり、さらに一番安い天井桟敷のチケットが一枚残っていたので、すぐに購入しました。
ポッリーニを生で聴くのは初めてで、イタリアに居るんだからポッリーニくらい聴いておかなくちゃと思い、プログラムも前半がベートーヴェンのソナタ「テンペスト」「熱情」と私でも良く知っている曲だったので、嬉々として行ったのですが、期待はずれでした。
スカラ座という空間のためなのか、私の聴いていた場所のためか、ピアノの音がクリアでなく、強弱も平坦で、メゾピアノからフォルテまでしかないような印象で、とてもテンペストや熱情という言葉からは遠い、きれいなロマンチックなものに聞こえました。私は、煮えたぎる激しい音楽、感情、ドラマを聴きたかったのになぁ。コンサート用シュタインウェイという、モダンピアノの最たるもの、ピアノの進化を重ねた結果の最高のものと信じられている楽器を使用しているのに、皮肉なものです。
ブラヴォーの嵐の末、なんだかやりきれずにむっとして異常に長い休憩時間を過ごしていれば、隣ではド派手な化粧をしたおばさんたちが、「あぁ、本当に素晴らしい、ポッリーニは回を重ねるたびにより偉大になるわぁ」とか大声でわめいているし、私は気分が悪くなり、帰ろうかとも思ったけれど、後半はがらっと変わってブーレーズのソナタ第2番という演目だったので、留まりました。なんだか、ブランド商品に踊らされる消費者を見たようで、悲しくなりました。
ブーレーズは正直に言って、私には好きとか嫌いとかの判断にも困るような、理解の対象を越えるものだったけれど、曲が始まって、お!これが12音技法かな?!という初めての出会い的うれしさはありました。それにしても、はじめから終わりまでずっと同じ音を聴かされているようで、30分が永遠に感じました。12音技法は民主主義の概念から生まれた・・・ということを最近の授業で耳にしたけれど、確かにそうでした。教養になりました(笑)
昨年9月の、私の浜離宮のリサイタルに来てくださったある方が、~チェンバロはピアノより表現力に富んでいるかもしれない~という感想を下さったのを思い出し、そんなことを考えながら帰途につきました。
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