2016年10月31日月曜日

ナポリからバルセロナにやってきたチェロ奏者スプリアーニ

10月も今日でおしまいですね。昨日から冬時間になり、一気に日が短くなりました。
今月は新しいCDがリリースされ、月末にはスペインの3都市にて紹介演奏をしてきました。


Sala Atrium, Barcelona 2016.10.22

私も全く知らなかったイタリア人作曲家でチェリストのフランチェスコ・スプリアーニについて、CD冊子を参考に少しご紹介します。

まず彼の名前は、昔の手稿譜に4通りの表記がありややこしいのですが、その中で一番多く出てくる名前を選びました。1678年、南イタリアのバーリに近いConversanoに生まれ、その後ナポリで学びソプラノのマルゲリータ・メンケレッリと結婚、1708年から2年間バルセロナでカール6世のもと、レアル・カピッリャ楽団の第1チェロ奏者を勤めます。

時代はスペイン継承戦争まっ只中で、イタリア人音楽家と契約することは、カール6世のイタリアオペラ趣味に合うだけではなく、戦争相手フェリペ5世(ルイ14世の孫)に対抗する政略でもありました。

1710年にナポリに戻ってからは、1730年までレアル・カッペッラ楽団で、楽団長だったアレッサンドロ・スカルラッティなど当時を代表する作曲家と音楽を共にします。その後はリタイアし、1753年にナポリで没す。


Real Academia, Madrid 2016.10.25




Real Academia, Madrid

スプリアーニは史上初となるチェロ教本(Principij da imparare à suonare il Violincello)を書き、その中には12のチェロのためのトッカータがあります。トッカータという名前がチェロ作品に使われるのは他に例がなく、また、全トッカータにはスプリアーノ自身の手により、トッカータのディミニューションと通奏低音バスが後から付け加えられているのが興味深いです。

コレッリのヴァイオリンソナタ作品5のように、3行の5線譜に上からトッカータ旋律、ディミニューション、通奏低音バスが書かれています。



スプリアーニの作品だけを集めたCDはこれまでになく、今回の録音では、上述の12のトッカータから6曲、現在唯一残る器楽曲としてシンフォニアとソナタ、そしてカンタータ3曲を納めました。この企画を何年も前から温めていたという友人チェリストのGuillermo Turinaが手稿譜を求めてロンドンやナポリの国立図書館へ自ら足を運んで準備してきた深い情熱が、彼の紡ぐ音楽から伝わってきます。

こうして彼のプロジェクトに参加できたこと、そしてCDの完成をとてもうれしく思っています。世界初の録音となるカンタータ3曲とソナタなど、知られざる作品の数々を多くの方にお聴きいただければ幸いです。iTunesやアマゾンから、また日本での演奏会の機にはCDをご用意いたします。




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